抗菌薬投与(βラクタム)は時間をかけて投与すべき?
Prolonged versus short-term intravenous infusion of antipseudomonal β-lactams for patients with sepsis: a systematic review and meta-analysis of randomised trials
Lancet
PMID: 29102324
【背景】
βラクタムの持続投与に関するRCT,観察研究,メタアナリシスの結果は様々である.我々は,敗血症患者に対する抗緑膿菌βラクタムの持続投与と短時間投与の有効性を検証した.
【方法】
敗血症患者に対する抗緑膿菌βラクタムの経静脈的持続投与と短時間投与を比較するため,システマティックレビューとメタアナリシスを行った.2人の著者がそれぞれ独自にPubMed, Scopus,the Cochrane Library of clinical trials(2016年11月まで)を検索した(データや言語による制限なし).敗血症患者に対する抗緑膿菌βラクタムの持続投与(3時間以上)と短時間投与(60分以下)の死亡率や臨床的効果に対する比較した全てのRCTを採用した.RCTでなかったり,比較する2軍の抗菌薬が同一のものでなかったり,死亡率や臨床的効果のどちらも評価されず薬物動態や薬力学的な指標しか評価していないもの,そして参加者が10名以下の研究は除外した.データは事前に設定した形式に沿って抽出され,メタアナリシスにはMantel-Haenszel random-effects modelを用いた.プライマリアウトカムは全死亡(すべての時点)とした.このメタアナリシスはPROSPEROデータベースに登録され(CRD42016051678),PRISMAガイドラインに準じて報告されている.
【結果】
2196の論文が同定,スクリーニングされ,最終的に22の研究(1876名)がメタアナリシスに組み込まれた.GRADEシステムに則ると,死亡(アウトカム)についてのエビデンスの質はhighであった.カルバペネム,ペニシリン,そしてセファロスポリンが評価された.様々な年齢,APACHEⅡスコア,敗血症重症度,腎機能の患者が対象となった.持続投与は短時間投与に比べて全死亡率が低かった (risk ratio [RR] 0·70, 95% CI 0·56–0·87)(注:原文の表記はassociated with lower all-cause mortalityです,念のため).異質性は認められなかった (p=0·93, I2=0%). Funnel plotとthe Egger's testでは明らかな出版バイアスは確認できなかった.
【結論・解釈】
敗血症患者に対する抗緑膿菌βラクタムの持続投与は,短時間投与に比べて有意に死亡率が低かった.特定の年齢や敗血症の重症度,腎障害の程度,免疫機能を持った患者でのサブグループ研究が(今後)必要である.
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ここでは持続投与と訳してしまったが,当然一日中回しっぱなしにするわけではないです.
持続投与って一投与あたり何時間かければいいの?というまた別の問題があるにせよ3,4時間程度なら現場的にも許容範囲内?…でしょうか?
まあでもメタアナまで出て,現場で本格的にプラクティスを変えてくるところもあるでしょうね.
ちなみに,最後の出版バイアスに関しては,こちらのブログで簡潔にまとめていただいております.
wannabeafamilyphysician.blogspot.jp