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結局HIV治療は単剤でいけるのか

HIV療法の基本は多剤併用(基本的に3剤以上の併用)だが,多剤併用療法でコントロールが良好な患者に対する維持療法としてドルテグラビル(DTG)+リルピビリン(RPV)やDTG+ラミブジン(3TC)などの2剤療法の有効性が示されている[1,2].これらは,HIV治療薬のなかで比較的有害事象の多い(といっても昔のdドラッグやジドブジンなどと比べずいぶんマシになっているが)核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)を避ける(減らす)ことができるという点で意義がある.

 

ドルテグラビルが強すぎるために2剤での治療でも可能(かもしれない)とみることもできるが,さすがにそのドルテグラビルをもってしても単独での維持療法はダメらしい[3,4].ただこれまでのDTG単剤療法のstudyは,HIV感染から時間が経過した段階(chronic infection)でHIV療法を開始した患者を対象としたものであった.

 

今回新たに,HIV感染後早期の段階(primary HIV infection)でHIV療法を開始した患者を対象にDTG単独維持療法の効果を評価したstudyがでた[5].感染後早期に治療をした患者では,慢性感染状態で治療を開始するよりもlatent reservoirやviral diversityが少ないことが知られている(つまり,この集団に対してはメンテナンスとしての単独治療はいけるのでは?という流れ).パイロットスタディではあるものの,その結果によれば多剤併用療法からDTG単独に切り替えた群の成績は多剤併用療法を継続した群に対して非劣勢であった(主要アウトカム:48週後のウイルス抑制 [<50 copies/mL]達成率).

 

よりシンプルな治療のオプションを残すという意味でも,HIV早期治療は待ったなしか.

 

1. Lancet 2018; 391(10123): 839-49.  

2. J Antimicrob Chemother 2018 [Epub ahead of print]. PMID: 30476165. 

3. J Antimicrob Chemother 2018;73(7):1965-71. PMID: 29608685. 

4. Clin Infec Dis 2019 [Epub ahead of print]. https://doi.org/10.1093/cid/ciy1132

5. Clin Infec Dis 2019 [Epub ahead of print]. https://doi.org/10.1093/cid/ciy1131