年取るとなんでもメモしないと忘れちゃうよね

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グラム染色のハードル

最近は質量分析器の導入により従来より短時間で菌の同定を行うことができるようになりましたが,検体に菌がいるかどうかや菌の形態学的特徴をサクッと観察したい場合であれば,早くて簡便で低コストなグラム染色はもってこいであり,感染症診療においては今なお有用なツールです.

 

ただ早くて簡便とは言ったものの,細々としたハードルが存在するのも事実です.

 

1.染色するための環境が必要(結構汚れるので要メンテナンス)

2.検体採取,固定,染色の工程にそれなりにコツが必要

3.1コース(染色から観察まで)最短でも10-15分(忙しい診療の合間にできるか)

 

1がネックになっている施設,多いんじゃないでしょうか.施設のハード面での問題や,場を共有する他のスタッフの理解も得る必要があります.ただここさえクリアできればほぼハードルを飛び越えたようなもの.

 

2については,診療科で教育体制が整っているところや院内に自前の細菌検査室があるところであれば教えを請うことができますが,そういった恵まれた施設ばかりではないと思います.がしかし,今や優良な書籍やWEBサイトも多く,勉強に際してそこまで不自由することも無いのではと思います(たしかに,人づてでしか教われない職人技のようなものも存在するとは思うのですが).

 

グラム染色関連の書籍は結構あるのですが,一つおすすめなのが栄研化学が出している微生物検査ナビ(第2版)です.わりとガチめな書籍なのですが,カラーで見やすく,最初の方に手技の解説ものっています.栄研化学のwebサイトから注文できます.WEBサイトでは,「グラム染色道場」は鉄板です.ブログを書籍化した解説本が今月中に発売されるようなので,それも良さそうですね.

 

3に関しては慣れである程度克服できますが,野戦病院の激混み外来で逐一痰や尿のグラム染色をしている余裕は無いかもしれません.他の人の手が借りられない状況ではなおさら.当たり前ですが,グラム染色があたえる情報には限界があるので,原理主義的にやたらめったら染色を行って自身が消耗するのは本末転倒です.たとえば染色によって抗菌薬の処方の有無や選択のプラクティスが変わりうるような状況など,適切なタイミングで使用できるのが理想ですね.