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菌血症に対する抗菌薬投与は14日間もいらない?

Comparing the Outcomes of Adults With Enterobacteriaceae Bacteremia Receiving Short-Course Versus Prolonged-Course Antibiotic Therapy in a Multicenter, Propensity Score–Matched Cohort

Clinical Infectious Diseases, Volume 66, Issue 2, 6 January 2018, Pages 172–177,

PMID: 29190320

 

【背景】

腸内細菌科細菌による菌血症に対する抗菌薬の推奨投与期間は7−14日間である.著者らは,腸内細菌科細菌菌血症に対する抗菌薬治療として短期間の投与(6−10日間)を受けた患者と長期間の投与を受けた患者のアウトカムを比較した.

 

【方法】

3施設において後向きコホート研究を施行し,単一の腸内細菌科細菌による菌血症に対してin vitroで感受性が確認された抗菌薬による治療を6−16日間受けた者を組み入れた(期間:2008-2014年).1:1の傾向スコアマッチング(最近傍マッチング,without replacement)を行い,2治療群の患者の抗菌薬終了後30日以内の全死亡リスク(プライマリアウトカム)を回帰分析で推計した.セカンダリアウトカムとして菌血症再発,CDI発症,多剤耐性GNRの発生(すべて抗菌薬終了後30日以内)を設定した.

 

【結果】

Well-balancedな385ペアがマッチした.短期間群の投与期間中央値は8日(IQR, 7-9日)で長期間群は15日(IQR, 13-15日)であった.死亡率について,両群で有意な差は認められなかった(調整済みハザード比, 1.00; 95%CI, 0.62-1.63).菌血症再発,CDI発症のオッズについても同様であった.短期間投与が多剤耐性GNRの発生に対して抑制的に働く傾向が見られた.

 

【結論】

腸内細菌科細菌菌血症に対する抗菌薬の短期間投与は長期間投与と同様のアウトカムをもたらし,(抗菌薬投与によって生じる)多剤耐性GNRの発生を抑制するかもしれない.

 

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アブストをざっと目を通しただけ.

 

傾向スコアマッチングを行ったとは言え,比較的少数の後向き研究がCIDに載る意味を考えると,やはり抗菌薬適正使用に絡むトピックだからか.

 

この手の研究はPSマッチングの妥当性が一つの肝なので,きちんと本文を読んでPS算出に関する因子の選択などを確認したほうが良さそう.

 

あと大切なのは,この研究では短期間投与群と長期間投与群の30日全死亡率に「有意差を見いだせなかった」と言っているだけで,これは両群に本当に差が無いと言っているわけではない.(実際,「有意差なし」をもって両群は同等と言っているような研究は無数にある.もちろん誤解である)

 

ただ,調整済みハザード比の点推定値が1.00であるところを見ると,まあ多分差は無いんでしょうね,という解釈にはなる.

 

使用された抗菌薬の内訳などもわからないため.これは本文確認マスト.