年取るとなんでもメモしないと忘れちゃうよね

読んだものや考えたことのメモでございます

P.knowlesiにもリアメットがよろしい

Artemether-Lumefantrine Versus Chloroquine for the Treatment of Uncomplicated Plasmodium knowlesi Malaria: An Open-Label Randomized Controlled Trial CAN KNOW

Clinical Infectious Diseases, 2018

PMID: 29020373

 

【背景】
Plasmodium knowlesiは東南アジアでの報告が増加しており,マレーシアではマラリアの原因として最もコモンな原虫である.これまでP.knowlesiに対するArtemether-lumefantrine (AL) の効果を比較したランダム化研究は存在しない.

 

【方法】

マレーシア(Sabah)の3つの病院で,合併症のないknowlesiマラリアに対するALとクロロキン(CQ)の効果を比較するRCTを実施した.以下の患者を研究対象とした

;weighed >10 kg,a parasitemia count <20000/μL,a negative rapid diagnostic test result for Plasmodium falciparum histidine-rich protein 2.診断はPCRで確定した.患者はブロックランダム化でAL群(total target dose, 12 mg/kg for artemether and 60 mg/kg for lumefantrine),CQ群 (25 mg/kg)に割り付けた.プライマリアウトカムは治療後24時間時点での原虫のクリアランスとし,modified ITT解析を行った.

 

【結果】

18人の小児を含む123人の患者が対象となった(November 2014 to January 2016).治療開始後24時間時点で,AL群で76% (95% confidence interval [CI], 63%–86%; 44 of 58) ,CQ群で60%(47%–72%; 39 of 65; risk ratio, 1.3 [95% CI, 1.0–1.6]; P = .06)の患者で原虫寄生率ゼロを達成し,48時間までにすべての患者が寄生率ゼロを達成した.治療42日目までに治療失敗はなかった.フォロー期間中の貧血のリスクは両群で同等であった.AL群はCQ群に比べベッド占拠(入院期間)が少なかった(2414 vs 2800 days per 1000 patients; incidence rate ratio, 0.86 [95% CI, .82–.91]; P < .001).重篤な有害事象はなかった.

 

【結論】

合併症のないknowlesiマラリアに対してALは有効であり,優れた忍容性,迅速な治療反応による早期の退院が観察された(意訳:入院期間の短縮を認めた).これらは,マレーシアの全てのPlasmodium speciesに対してALを第一選択とすることを支持している.

 

**********

 

サルマラリアの一種のP.knowlesiに対するリアメット錠の効果を検討したRCT.

 

サルマラリアは四日熱マラリアと見た目で区別することが難しいですが,PCRによる診断の普及によって,実はこれまで四日熱と診断されていたものの多くが(地域によっては)knowlesiだったのでは?と言われています.

 

マラリアは原虫のタイプや合併症の有り無しで対応が変わってくるのでとっつきにくい部分もありますが,こちらのDCCの手引きがサクッと勉強するにはちょうどよいです.

 

P.knowlesiについてはこちらの総説がよくまとまってます.

 

 

骨折治療後のインプラント除去術に予防的抗菌薬投与は必要?

Effect of Antibiotic Prophylaxis on Surgical Site Infections Following Removal of Orthopedic Implants Used for Treatment of Foot, Ankle, and Lower Leg Fractures

A Randomized Clinical Trial

JAMA. 2017;318(24):2438-2445.

PMID: 29279933

 

【目的】

骨折治療(膝以下)に用いたインプラントの抜去術の際の術前抗菌薬投与(単回)の効果を評価する.

 

【デザイン・セッティング・対象者】

研究デザイン:多施設二重盲検化ランダム化試験

対象者:骨折(膝以下)に対して外科的治療を受け,その後インプラント抜去術を受けた18-75歳の患者(計500名)

期間:2014/11-2016/09

場所:オランダの19施設(教育病院17, 大学病院2)

除外基準:activeな感染・瘻孔の存在,抗菌薬治療を受けたもの,osteosynthesis materialの再挿入,セファロスポリンアレルギー,腎疾患,免疫抑制剤使用,妊娠

 

【介入】

術前のセファゾリン(CEZ)1gの経静脈的投与(単回)(n=228)もしくは生理食塩水投与(n=242)

 

【主要アウトカム・評価】

プライマリアウトカムは30日以内の術後創部感染(CDCの評価基準に準じる).セカンダリアウトカムは機能的予後,健康関連qOL,患者満足度.

 

【結果】

477名の参加者(平均年齢,44歳[標準偏差,15];女性,274名[57%];インプラント挿入からの期間の中央値,11ヶ月[IQR7-16])のうち,470名が試験を完遂した.66名(14.0%)がSSIを発症し,CEZ群が30名(13.2%),生食群が36名(14.9%)であった(絶対リスク差 -1.7[95%CI,-8.0 to 4.6],P=0.60).

 

【結論】

骨折治療(膝以下)に用いたインプラントの抜去術を受けた患者において,術前のCEZ単回投与は生食と比較して抜去後30日以内のSSIのリスクを減らさなかった.

 

**********

 

これも抗菌薬適正使用系.

 

【気になった点】

・SSI発症率14%?(そもそも高いような印象,こんなもん?)

・CEZ1g,少ない??

 

SSI発症に関わる因子として抗菌薬以外には,術前・術中の清潔操作や外科医の腕なんかがあるでしょうか.この辺は国や施設間でも差がありそうだけど.もともとRCTは外的妥当性がweak pointだが,この研究はそういう意味でさらに慎重に外挿する必要がありそう.

 

そしてこれも「有意差なし」という結果であるだけで,「両群に真に差がない」と言っているわけではない.わずかとは言え,ややCEZ群が押してるようにも見えるし….

 

抗菌薬投与(βラクタム)は時間をかけて投与すべき?

Prolonged versus short-term intravenous infusion of antipseudomonal β-lactams for patients with sepsis: a systematic review and meta-analysis of randomised trials

Lancet Infec Dis. 2018 Jan;18(1):108-120.

PMID: 29102324

 

【背景】

βラクタムの持続投与に関するRCT,観察研究,メタアナリシスの結果は様々である.我々は,敗血症患者に対する抗緑膿菌βラクタムの持続投与と短時間投与の有効性を検証した.

 

【方法】

敗血症患者に対する抗緑膿菌βラクタムの経静脈的持続投与と短時間投与を比較するため,システマティックレビューとメタアナリシスを行った.2人の著者がそれぞれ独自にPubMed, Scopus,the Cochrane Library of clinical trials(2016年11月まで)を検索した(データや言語による制限なし).敗血症患者に対する抗緑膿菌βラクタムの持続投与(3時間以上)と短時間投与(60分以下)の死亡率や臨床的効果に対する比較した全てのRCTを採用した.RCTでなかったり,比較する2軍の抗菌薬が同一のものでなかったり,死亡率や臨床的効果のどちらも評価されず薬物動態や薬力学的な指標しか評価していないもの,そして参加者が10名以下の研究は除外した.データは事前に設定した形式に沿って抽出され,メタアナリシスにはMantel-Haenszel random-effects modelを用いた.プライマリアウトカムは全死亡(すべての時点)とした.このメタアナリシスはPROSPEROデータベースに登録され(CRD42016051678),PRISMAガイドラインに準じて報告されている.

 

【結果】

2196の論文が同定,スクリーニングされ,最終的に22の研究(1876名)がメタアナリシスに組み込まれた.GRADEシステムに則ると,死亡(アウトカム)についてのエビデンスの質はhighであった.カルバペネムペニシリン,そしてセファロスポリンが評価された.様々な年齢,APACHEⅡスコア,敗血症重症度,腎機能の患者が対象となった.持続投与は短時間投与に比べて全死亡率が低かった (risk ratio [RR] 0·70, 95% CI 0·56–0·87)(注:原文の表記はassociated with lower all-cause mortalityです,念のため).異質性は認められなかった (p=0·93, I2=0%). Funnel plotとthe Egger's testでは明らかな出版バイアスは確認できなかった.

 

【結論・解釈】

敗血症患者に対する抗緑膿菌βラクタムの持続投与は,短時間投与に比べて有意に死亡率が低かった.特定の年齢や敗血症の重症度,腎障害の程度,免疫機能を持った患者でのサブグループ研究が(今後)必要である.

 

**********

 

ここでは持続投与と訳してしまったが,当然一日中回しっぱなしにするわけではないです.

 

持続投与って一投与あたり何時間かければいいの?というまた別の問題があるにせよ3,4時間程度なら現場的にも許容範囲内?…でしょうか?

 

まあでもメタアナまで出て,現場で本格的にプラクティスを変えてくるところもあるでしょうね.

 

ちなみに,最後の出版バイアスに関しては,こちらのブログで簡潔にまとめていただいております.

wannabeafamilyphysician.blogspot.jp

 

菌血症に対する抗菌薬投与は14日間もいらない?

Comparing the Outcomes of Adults With Enterobacteriaceae Bacteremia Receiving Short-Course Versus Prolonged-Course Antibiotic Therapy in a Multicenter, Propensity Score–Matched Cohort

Clinical Infectious Diseases, Volume 66, Issue 2, 6 January 2018, Pages 172–177,

PMID: 29190320

 

【背景】

腸内細菌科細菌による菌血症に対する抗菌薬の推奨投与期間は7−14日間である.著者らは,腸内細菌科細菌菌血症に対する抗菌薬治療として短期間の投与(6−10日間)を受けた患者と長期間の投与を受けた患者のアウトカムを比較した.

 

【方法】

3施設において後向きコホート研究を施行し,単一の腸内細菌科細菌による菌血症に対してin vitroで感受性が確認された抗菌薬による治療を6−16日間受けた者を組み入れた(期間:2008-2014年).1:1の傾向スコアマッチング(最近傍マッチング,without replacement)を行い,2治療群の患者の抗菌薬終了後30日以内の全死亡リスク(プライマリアウトカム)を回帰分析で推計した.セカンダリアウトカムとして菌血症再発,CDI発症,多剤耐性GNRの発生(すべて抗菌薬終了後30日以内)を設定した.

 

【結果】

Well-balancedな385ペアがマッチした.短期間群の投与期間中央値は8日(IQR, 7-9日)で長期間群は15日(IQR, 13-15日)であった.死亡率について,両群で有意な差は認められなかった(調整済みハザード比, 1.00; 95%CI, 0.62-1.63).菌血症再発,CDI発症のオッズについても同様であった.短期間投与が多剤耐性GNRの発生に対して抑制的に働く傾向が見られた.

 

【結論】

腸内細菌科細菌菌血症に対する抗菌薬の短期間投与は長期間投与と同様のアウトカムをもたらし,(抗菌薬投与によって生じる)多剤耐性GNRの発生を抑制するかもしれない.

 

**********

 

アブストをざっと目を通しただけ.

 

傾向スコアマッチングを行ったとは言え,比較的少数の後向き研究がCIDに載る意味を考えると,やはり抗菌薬適正使用に絡むトピックだからか.

 

この手の研究はPSマッチングの妥当性が一つの肝なので,きちんと本文を読んでPS算出に関する因子の選択などを確認したほうが良さそう.

 

あと大切なのは,この研究では短期間投与群と長期間投与群の30日全死亡率に「有意差を見いだせなかった」と言っているだけで,これは両群に本当に差が無いと言っているわけではない.(実際,「有意差なし」をもって両群は同等と言っているような研究は無数にある.もちろん誤解である)

 

ただ,調整済みハザード比の点推定値が1.00であるところを見ると,まあ多分差は無いんでしょうね,という解釈にはなる.

 

使用された抗菌薬の内訳などもわからないため.これは本文確認マスト.